2000年日本人小児の体格 標準値

日本成長学会・日本小児内分泌学会合同標準値委員会

【1.身長と体重の標準値】

1)平均身長・平均体重およびその標準偏差と、横断的成長曲線(身長・体重 SD曲線)(図1a,図1b,附表1)※1,※3

2000年の、厚生労働省の乳幼児身体発育調査報告書(0歳〜6歳)※1と文部科学省の学校保健統計報告書(6歳〜17歳)※2データをもとにして作成したもの※3

幼児期は年齢区分ごとに平均値を結ぶ曲線を最小二乗法によって多項式として表し、標準偏差は6歳以降の標準偏差に滑らかにつながるように出生時の標準偏差値を通る一次関数として表した※4。学童期は平成 12年度学校保健統計調査報告書から各年齢群の平均値と標準偏差値を抽出し、それが各年齢の中央の年月齢の値であるとみなして作成し、各月齢については比例計算で補間した※5

これらを最終的には eye-fitによって滑らかになるように結んで曲線を作図した。コメント)成長障害など、身長を評価するために、最もよく用いられる。ただし、体重は、正規分布しないので、この平均値をもとに肥満度などを評価することはできない。

2)横断的成長曲線(身長・体重パーセンタイル曲線)(図2a,図2b,附表2)※6

2000年の、厚生労働省の乳幼児身体発育調査報告書(0歳〜6歳)※1と文部科学省の学校保健統計報告書(6歳〜17歳)※2のデータをもとに、 LMS法を用いて作成した。コメント)個々人のデータをプロットすると、全体の中の位置が分かりやすい。

【2.肥満度】

肥満度とは、実測体重が標準体重に対して何%の増減に当たるかを示す指数である。計算式は、以下の通りである。

肥満度={(実測体重.標準体重)/標準体重}× 100(%)

標準体重の算定方法に次の 2つの方法がある。

1)性別・身長別標準体重(附表3)※1,※7

2000年の、厚生労働省の乳幼児身体発育調査報告書(0歳〜6歳)※1と文部科学省の学校保健統計報告書(6歳〜17歳)※2のデータをもとに、男女毎に、身長に対する体重の中央値を求めて標準体重とした。その値は、次の式で表される(Xに身長(cm)を入れる)

【男児】

幼児期※1(6歳未満、身長 70cm以上 120cm未満)
標準体重= 0.00206X²-0.1166X+6.5273

学 童※7(6歳以上、身長 101cm以上 140cm未満)
標準体重= 0.0000303882X³+0.00571495X2²+0.508124X-9.17791

学 童※7(6歳以上、身長 140cm以上 149cm未満)
標準体重= -0.000085013X³+0.0370692X²-4.6558X+191.847

学 童※7(6歳以上、身長 149cm以上 184cm未満)
標準体重= -0.000310205X³+0.151159X²-23.6303X+1231.04

【女児】

幼児期※1(6歳未満、身長 70cm以上 120cm未満)
標準体重= 0.00249X²-0.1858X+9.0360

学 童※7(6歳以上、身長 101cm以上 140cm未満)
標準体重= 0.000127719X³+0.0414712X2²+4.8575X-184.492

学 童※7(6歳以上、身長 140cm以上 149cm未満)
標準体重= -0.00178766X³+0.803922X²-119.31X+5885.03

学 童※7(6歳以上、身長 149cm以上 171cm未満)
標準体重= 0.000956401X³+0.462755X²-75.3058X+4068.31

■性別・年齢別・身長別標準体重よりも全般的に標準体重値が低く、肥満の出現率を過大評価している可能性がある。特に13歳以降の140~150cmの低身長群では肥満度を過大評価する点には注意が必要である。

■思春期発達段階の違い等に基づく、年齢による体型の差は、考慮されない。

2)性別・年齢別・身長別標準体重(5歳以降)(附表4)※8

2000年の文部科学省の学校保健統計調査報告書(5歳〜17歳)のデータをもとに、男女別に1歳毎に身長・体重をプロットし、等確率楕円式を用いて5%棄却を行い、1次式の標準体重計算式を作成した(表1)

表1.5歳以上17歳までの性別・年齢別・身長別標準体重計算式

年齢(歳) 男子
a b
0.386 23.699
0.461 32.382
0.513 38.878
0.592 48.804
0.687 61.390
10 0.752 70.461
11 0.782 75.106
12 0.783 75.642
13 0.815 81.348
14 0.832 83.695
15 0.766 70.989
16 0.656 51.822
17 0.672 53.642
標準体重= a×身長(cm)-b
年齢(歳) 女子
a b
0.377 22.750
0.458 32.079
0.508 38.367
0.561 45.006
0.652 56.992
10 0.730 68.091
11 0.803 78.846
12 0.796 76.934
13 0.655 54.234
14 0.594 43.264
15 0.560 37.002
16 0.578 39.057
17 0.598 42.339
標準体重= a×身長(cm)-b

(問題点)

  • 年齢毎に 1次式の係数が異なるので、同じ身長体重であっても、誕生日を挟んで年齢が1歳違うと、標準体重が異なるため肥満度が変わってしまう。
  • 特に男子15歳以上、女子14歳以上では、年齢が進むに従い身長別標準体重が段階的に変化するので、同じ身長体重であっても肥満度の評価が毎年変化する。
  • 高身長、低身長児も1次式で標準体重を算出しているため、特に低身長児では肥満度の評価が正しくない可能性がある。

(コメント)

標準的な集団としての評価や疫学的な評価には、性別・年齢別・身長別標準体重を用いた肥満度評価の方が優れていると思われる。個人の肥満度の変化の評価には、性別・身長別標準体重を用いた肥満度は、グラフ化すると視覚的に判定しやすく、縦断的な評価を行いやすい。

【3.BMI】(図3a,図3b,附表5)※9

2000年の、厚生労働省の乳幼児身体調査報告書(0歳〜6歳)と文部科学省の学校保健統計調査報告書(6歳〜17歳)のデータをもとに、LMS法を用いて作成したパーセンタイル曲線を用いる(図3a,図3b)

【文献】

  1. 平成12年乳幼児身体発育調査報告書.厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課(監修)財団法人母子衛生研究会(編)母子保健事業団.2002
  2. 平成12年度学校保健統計調査報告書.文部科学省生涯学習政策局調査企画課.2003
    【横断的標準成長曲線(身長・体重SD曲線)】
  3. 伊藤善也、加藤則子、立花克彦、藤枝憲二:小児慢性特定疾患治療研究事業において採用された身長基準に準拠した2000年度版「標準身長表」および「標準成長曲線」.小児科診療7:1343-1351, 2005
  4. 加藤則子、坂本なほ子、加藤忠明:乳幼児の身長発育曲線. 平成16年度厚生労働科学研究「小児慢性特定疾患治療研究事業の登録・管理・評価・情報提供に関する研究」総括・分担研究報告書.pp45-5,2005
  5. 立花克彦:2000年標準身長・体重表の作成.厚生科学研究「成長ホルモン治療の適正化に関する研究」平成13年度研究報告書.pp616-624,2002
    【横断的標準成長曲線(身長・体重パーセンタイル曲線)】
  6. 加藤則子、村田光範、河野美穂、谷口隆、大竹輝臣:0歳から18歳までの身体発育基準について-「食を通じた子どもの健全育成のあり方に関する検討会」報告書より-.小児保健研究63:345-348,2004
    【性別・身長別標準体重】
  7. 伊藤善也:肥満度判定曲線.藤枝憲二(編)成長曲線は語る.診断と治療社.pp39-43,2005
    【性別・年齢別・身長別標準体重】
  8. 生魚薫、橋本令子、村田光範:学校保健における新しい体格判定基準の検討新基準と旧基準の比較、および新基準による肥満傾向児並びに痩身傾向児の出現頻度にみられる1980年度から2006年度にかけての年次推移について.小児保健研究69:6-13,2010
    【BMIパーセンタイル曲線】
  9. Kato N:The cubic function for spline smoothed L, S, M values for BMI reference data of Japanese children.Clin Pediatr Endocrinol 20:47-49,2011